- タイトルと公開日の秘密
- 九州ロケ地の秘密
- 関東ロケ地の秘密
- 役名の秘密
- 恋空ソング(準備中)
『恋空』に「十五歳の母」や「腐ったミカンの方程式」へのオマージュのある事は、前に述べた通りです。しかし、『金八先生』最終第8シリーズの放送と同時期に公開された『恋空』には、より深い小山内さんへのオマージュが込められていて、究極の小山内美江子オマージュ、すなわち究極の反戦映画です。
『恋空』のタイトルの秘密

映画のタイトルは、その作品を象徴するものなので、制作者は特に気を使います。『恋空』の劇中、美嘉役の新垣さんがナレーションで「私はずっと空に恋をしています」と語りかける事から、『恋空』というタイトルはつけられたと考えられます。
しかし、美嘉がずっと恋をしている相手はヒロであって、空ではありません。なぜ、美嘉が空に恋をしているのか、映画の中で明らかにされないのです。これにはきっと何か理由があるはずです。
そこで、小山内さんの思いがもっとも詰まった「入試十日前心得」の荒川土手の場面に戻ります。荒川土手の場面で、金八が紹介した「フグを食べた人の話」は坂口安吾の『ラムネ氏の話』の一部で、その中に詩人の三好達治が出てきます。
三好達治が、戦没学生を追悼した詩に『鴎』のある事も前に説明しました。その『鴎』の第一節に「空に恋して」とよく似た「空で恋をして」という言葉が出てきます。
つひに自由は彼らのものだ
彼ら空で恋をして
雲を彼らの臥所とする
つひに自由は彼らのものだつひに自由は彼らのものだ
太陽を東の壁にかけ
海が夜明けの食堂だ
つひに自由は彼らのものだつひに自由は彼らのものだ
太陽を西の窓にかけ
海が日暮れの舞踏室だ
つひに自由は彼らのものだつひに自由は彼らのものだ
彼ら自身が彼らの故郷
彼ら自身が彼らの墳墓
つひに自由は彼らのものだつひに自由は彼らのものだ
ひとつの星をすみかとし
ひとつの言葉でことたりる
つひに自由は彼らのものだつひに自由は彼らのものだ
朝やけを朝の歌とし
夕やけを夕べの歌とす
つひに自由は彼らのものだ
『恋空』というタイトルは、三好達治の『鷗』から取られていて、戦没学生、特に特攻隊員達への慰霊の気持ちが込められていると考えて良いでしょう。
『恋空』公開日の秘密
『恋空』の公開日は2007年11月3日、文化の日です。この日、新垣さんと春馬さんは、監督の今井夏木さんらと共に舞台挨拶を行いました。

11月3日が文化の日に定められた理由は、1946年11月3日に公布された日本国憲法が、平和と文化を重視していることからです。つまり、11日3日の文化の日は、5月3日の憲法記念日とならんで、日本国憲法と関係が深い日です。
『恋空』が公開された2007年は、1947年の日本国憲法の施行から60周年の記念の年でした。つまり、2007年11月3日という公開日には、『恋空』関係者の、日本国憲法を守って平和で文化的な社会を守って行くという決意が込められています。
『恋空』の隠されたテーマの1つは尊い犠牲のおかげで手にすることのできた、日本国憲法を守る、護憲なのです。
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